インプラント治療
一度失った歯は元には戻りません。
しかし、『インプラント治療』という『第三の歯』を得る方法があります。
歯を失ってしまった患者様には、ぜひとも『第三の歯』を実感していただきたいと思っております。
一生自分の歯で食事を楽しむために
何らかの原因で歯を失ってしまった際、入れ歯等ではなく、自分の歯と同じようなもので代用できればと考えるのはごく自然なことです。
インプラントは、これを実現してくれるものであると言えます。
インプラントはあごの骨と融合するので、自分の歯と同じような感覚で食事や歯みがき、会話をすることができます。
40年ぶりにするめを食べたり、鶏の軟骨を食べることが可能になったりという話は、インプラント治療をされた患者様からよくお聞きします。
一方で、インプラントの抜け落ちの事例がメディア等を通じて紹介されるようになってきていますが、日本口腔外科学会の口腔外科専門医による執刀であれば、長期的に見て非常に有効な治療であると言えます。
歯を失ってしまっても以前と遜色ない生活を望まれる患者様におかれましては、インプラントはご検討いただきたい治療法です。
治療の流れ
当院では、口腔外科専門医によるインプラント手術を行っております。
インプラントは、金属を埋め込み人体に負荷をかけることになりますので、不安を感じられる方がいらっしゃるかと思います。
ここではインプラント手術の流れをご説明いたします。
事前準備
インプラントは外科手術であるため、しっかりとした事前準備が必要です。
特に欠かせないことは、次の2点です。
- あごの骨の状態を調べること
- かみ合わせの状態を確認すること
あごの骨が量的、質的に条件を満たしていなければ、インプラントを埋めることはできません。
また、かみ合わせの状態をしっかりと確認しておかないと、インプラントを入れることによってかみ合わせを変えてしまい、その後、身体のバランスに影響を及ぼしたり、インプラントが抜け落ちてしまったりという原因になりかねません。
そのため当院では、高性能なレントゲンをはじめ、状況に応じて歯科用CTを撮り、患者様のあごの骨やかみ合わせなどの確認をしっかり行います。ここまでが準備段階です。
施術
インプラントでは、骨の中にチタンというアレルギーを起こしにくい金属を植えますので、綿密に麻酔をかけることになります。
麻酔が十分に効いていることを確認してから手術に入りますので、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。
さらに、身体に異常のないことを確認してから手術を始めます。
インプラント手術は、以下の流れで行います。
- 顎骨(がっこつ)を覆っている粘膜を切開して骨を露出させる
↓ - 事前の診断通りにインプラントを植えることができるかどうか確認
↓ - 細いドリルを使用してガイド穴作り(穴が正しい方向に掘れているかどうか確認)
↓ - 穴を徐々に拡大し、インプラントを植えこむ
これらの行程では、技術はもとより、徹底して滅菌された医療器具を使用します。また患者様を清潔な布で覆い、消毒に十分配慮した環境で行います。
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治療の流れの図
インプラント治療での注意点
インプラントは口腔外科治療に長(た)けた医師により、時間をかけて正確な治療を行えば非常に有用な治療である一方、外科手術の一つであるため、まれではありますが、リスクやトラブルも起こりえます。ここでは医学的トラブルについて言及いたします。 全身的なものと、口腔内の局所的なものとに分けて説明いたします。
・全身的なトラブル
インプラント治療の対象となる患者様は高齢者が多く、それゆえ何かしらの内科的疾患をお持ちのケースが多数見受けられます。例えば、高血圧症や狭心症、糖尿病などが多く挙げられます。
これらの疾患をお持ちであっても、ほとんどの場合は問題なくインプラント治療を受けることができます。
なお、内科的疾患をお持ちの患者様で、インプラントに対してご不安な方や、当院で必要と判断した場合は、院長が以前、口腔外科部長を務めておりました三井記念病院を始めとした、内科的疾患の専門医をご紹介いたします。
ただし、内科的疾患の中でも、半年以内に心筋梗塞を起こしたという方や、甲状腺疾患のある方、重い血液疾患のある方、透析患者様などは、術中や術後に合併症を起こすリスクが高いため、残念ながらインプラント手術は避けたほうがよいと考えます。
当院ではこのような説明をしっかり行い、患者様一人ひとりの症状を把握した上で、緊急時に備えた医療設備のもと、治療にあたります。
・局所的なトラブル
局所的トラブルとは、すなわち手術に伴う口腔内のトラブルです。
インプラントは基本的に、あごの骨の中で行う手術であるため、高レベルの口腔外科に関する「知識」と「技術」が求められます。
この「知識」と「技術」とは、「術後の管理や偶発症(たまたま起こってしまった症状)に対するリカバリー対応能力」と、「局所の解剖技術」のことです。
こういった能力が十分でないことで招く恐れのある大きなトラブルとして、下あごの場合、あごの中を貫通している神経と結束の束(下歯槽神経血管束)を傷つけた時の出血と、神経まひの偶発症が挙げられます。
上あごの場合は、上あごの骨の直下に広がる副鼻腔(びくう)の一つである、上顎洞への穿孔(せんこう 穴があいてしまうこと)が、頻度の高いものとして挙げられます。
いずれも非常に危険なトラブルですが、仮に起こったとしても、口腔外科専門医によるしっかりとした外科手術であれば、回復が可能です。