歯周病治療
あなたの口臭は大丈夫ですか?
外国人の患者様の治療に携わった経験から申し上げると、日本人は特に「口臭」に鈍感なのではないでしょうか。その背景には、風習の相違があると考えられます。
電車の中で隣の席から臭ってくる耐えがたい悪臭、相手と向き合って話している時に漂う口臭など、どなたでも一度は経験がおありでしょう。
しかも、こういう方の多くは、自分が悪臭をはいているということに、まったく気づいていないケースが多いようです。
まさに「口(公)害」と言えますね。
一方、ほとんど口臭がないのに、「自分の口が臭いのでは?」と悩んでいる方もいます。
「自臭症」といい、これが原因でノイローゼになる方がいます。
さて、口臭の原因は、蓄膿(ちくのう)症など鼻の疾患から来るもの、胃腸の疾患から来るもののほか、直前に食べた食物により一時的に起こるものなど、いろいろな原因があげられますが、う蝕に加えて、最大の原因は「歯周病」によるものです。
ここでは歯周病に絞ってお話を進めることとします。
歯周病の原因と予防
歯周病は一口でいえば、歯周病菌による慢性感染症の一種です。歯周病の初期は軽い歯肉炎として始まります。
臨床的に正常と考えられる健康な歯肉でも、歯肉と歯の境界部には細菌の存在が認められるといわれています。
これらの細菌は歯面清掃(歯みがき)が不十分であることによってできるプラークの発生により、さらに増殖し、増悪するとともに歯肉溝(歯周ポケット)が深くなり(盲嚢(もうのう)を形成)、歯肉から歯根膜(歯の根っこ)、歯槽骨(あごの骨)へと波及し、重度の歯周病へと進行して行きます。
こうならないためには、予防とともに歯周病の進行を防止し症状を改善するために、局所的にできてしまった原因プラークを徹底的に除去することにつきますが、副次的には、適切な食生活や糖尿病など歯周病を増悪させる病気がある場合は、基礎疾患を治療することが極めて重要です。
歯周病の症状
初期の段階では、感染はほぼ歯肉に限られ、歯肉の腫れと赤みとともにちょっとした刺激(ブラッシングやリンゴをかんだりすること)で出血します。この段階ではレントゲン写真でも骨に吸収は認められず、したがって、歯の動揺(歯がぐらつくこと)もほとんどありまません。 しかし、病状が進行すると、歯の周りで歯を支えている歯周組織へと病状が進行し、慢性感染性炎症により歯を支えているあごの骨が吸収され、歯が支持を失って徐々に動揺を起こします。このころになると、出血とともに排膿(うみ)が起こり、明らかに口臭が発生するようになります。歯周病がさらに進行すると、左の写真のように歯の動揺、排膿、強い口臭に加えて、レントゲン所見で著明な骨の吸収がみられ、最終的には骨の支持を失って、歯が抜け落ちてしまいます。
歯周病の診断
歯周病の診断は、歯肉の色、腫れの有無、出血と排膿の有無と程度、個々の歯の動揺、盲嚢の深さなどを調べます。これに加え、歯列の模型を作製し咬合(かみ合わせ)のチェック、エックス線写真の撮影により骨の吸収の程度を診査します。これらはすべて初期所見として記録しておく必要があります。以上の所見から総合的に歯周病の診断をします。
歯周病の治療
歯歯周病はほとんど保険診療で治療することができます。保険診療では、歯周病の重症度に応じて治療方法がほとんど決められており、これに沿った形で治療が効率的に進められます。 治療においては歯科医師と歯科衛生士と協力をして、歯科医師の診断と指示のもとで、歯科衛生士が補助的治療に当たるのが通常となっています。
治療後の注意
治療が終了した後はメンテナンスに入ります。歯周病では疾患の原因が常に口の中に存在し、再発の可能性にさらされているといっても過言ではありません。やや大げさにいえば、一連の治療が終わった時が、治療の始まりであるといってもよいでしょう。患者様によって異なりますが、年1~3回程度の定期的なチェックが必要です。